麻生内閣メールマガジン(第8号 2008/11/27)
この人に聞きたい
編集部注)政府は、毎年11月を伝統的工芸品月間と定め、全国各地において伝統的工芸品の普及啓発事業を実施しています。12日から16日まで「伝統的工芸品月間国民会議全国大会」が岐阜県で開催され、伝統的工芸品産業の振興に関し顕著な功労があった33名の方と6つの団体が表彰されました。今週は、表彰された美濃焼伝統工芸士の安藤百利行さんにメッセージをいただきました。

※ 全国大会の模様をこちらでご覧いただけます。



[美濃焼きの一人として]
(美濃焼伝統工芸士 安藤百利行)

 私たちが住む美濃の地は、いろいろな所から陶磁器の原材料が露出する焼き物作りの宝庫ともいえます。陶磁器の素材は全て美濃の自然が与えてくれたものです。

 私が幼少の頃は、立派な煙突を備えた「窯(かま)や」が無数に立ち並び、機械作りの大量生産が盛んに行われ活気があるかのようでしたが、時代の流れとともに、燃料が石炭から重油に、そしてガスへと代わり、また、大量生産品より個性的なぬくもりのある手仕事品が求められるようになり、「窯や」も自然に淘汰され、今では「窯や」という言葉も消えてしまいました。私もこの「窯や」で幼少の頃より土にまみれ家業に携わっていました。

 昭和39年、岐阜県瑞浪(みずなみ)市のクラフト(*)陶磁器開発事業に参加し、陶磁デザイナーの先生に師事することが出来ました。この時初めてクラフト陶磁器というものを目で見て、手に触れ、温かさ、ぬくもりで心が癒される想いがしました。以後先生の紹介で京都と愛知県常滑で勉強を重ね、昭和42年に独立して窯を開きました。

 初めの頃は、技も知識も未熟そのもので、手当たり次第のことを吸収しようと無我夢中で取り組み、数年の歳月を経た時、やっと自分の目指す焼き物の技法を見出し、さらに完成品にするため、日々研鑽(けんさん)するが、やればやるほど迷宮に入ってしまう感は否めない。土選びから焼き上げまでの一貫した作業の中に自分をいかに織り込んでゆけるか?

 それは、毎日毎日が模索の連続ではあるけれど着実に仕事を重ねてゆくことであり、そして何よりも苦しみの中で楽しく作陶することではないでしょうか。

 伝統工芸とは、先人の残してくれた、すばらしい偉業、技術などを伝承し、この伝統に甘んずることなく、伝統に立脚し、現代生活に相応しい焼き物を作ることが大切で、今後もそのつもりで制作し、後世に残る品が一品でも出来れば、後継者の育成にも役立つと思います。

 今回、これまでの取組を表彰していただいたことは、今までの自分を省みるよい機会を与えていただけたと喜んでおります。これで慢心することなく、独自の素材を駆使しいっそう完成度を高めるように努めてまいります。

(*)クラフトとは、手づくりの、または手工業による工芸品のことをいいます。

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