麻生内閣メールマガジン(第10号 2008/12/11)
この人に聞きたい
編集部注)政府は、昭和42年から、卓越した技能を持ち、その道で第一人者と目されている技能者を毎年決定し、「現代の名工」として表彰しています。
 今週は、今年「現代の名工」として表彰された造管工の福川賀皓(よしつぐ)さんにメッセージをいただきました。福川さんは、大径溶接鋼管(*)の製造設備の改善に努め、多くの考案と改善の実行により、生産性と品質を世界最高レベルとすることに大きく貢献されました。また、後進の育成にも力を注いでおられます。

※ 「現代の名工」について、詳しくはこちらをご覧ください。



[海外で知る「ものづくり日本」]
(平成20年度「現代の名工」被表彰者、住友金属工業(株)鹿島製鉄所 福川賀皓)

 1961年に住友金属工業(株)へ造管工として入社以来、現在に至るまで溶接鋼管の製造業務一筋に従事してまいりました。

 大径溶接鋼管は、主に石油や天然ガス用のパイプラインで使用されており、産油国をはじめとして世界各地で需要が増えています。私は、2000年から2007年までは、パイプライン用の鋼管を製造するためにサウジアラビアに新設する大径溶接鋼管工場の現地操業指導者としてサウジアラビアに渡り、その任務にあたりました。

 日本を離れ海外でものづくりに携わることによって、これまで感じることのなかった「ものづくり日本」を感じることができました。

 言語も宗教も異なるなかでの設備立上げにおいては多くの苦難がありましたが、立上げ後の安定操業までがサウジアラビアでの私の使命でありましたので、新設備立上げ後は、今後の持続的な発展・向上につながるように従業員の教育・訓練にも力を注ぎました。

 そのような指導を行うなかで私がもっとも伝えたかったことは「ものづくりの心」でした。

 50度を超える夏の暑さは日本人にはこたえましたが、毎日午前・午後の2回は工場をまわり(現地現物主義)、従業員と問題点を話し合い、あきらめずに解決法を探そうと励まし(チャレンジ精神)、良い案がまとまれば即座に実行し(改善)、努力と効果に応じて全員の前で褒賞する一方、顧客の信頼を損なうような職務の怠慢には厳罰でのぞみました(信賞必罰)。

 熱意をこめて指導すればするほど、彼らは少しでも多くのことを吸収しようと反応してきます。そして、自らの手によって形を変え、出来上がる製品を前に目を輝かせている彼らには着実にものづくりの心が浸透してきていることを実感しました。将来、この工場で製造された大径溶接鋼管を使用して建設されたパイプラインを、日本に輸出される石油が通ることを想像すると、遠く離れてはいますが、ほんの少しでも日本とサウジアラビアを結ぶ架け橋になれた気がしました。

 現在、各業界の諸先輩のご努力により、中東でも日本製品に寄せる信頼は絶大なものがあり、日本人に対する勤勉・実直の評も揺るぎないものです。

 しかし、ご多分にもれず、新興国の追撃には目を見張るものがあります。何よりも彼らの目と言葉の端々に半世紀前の日本人の勢いを感じさせるものがあります。ものづくりに携わる者の一人として、その心に共感する仲間が増えることに喜びを感じる一方で、これまで幾多の先輩が築きあげてきたものづくりにおける世界一の座を今後も維持しなければならないと強く感じます。

 これまで、ものづくりの現場第一線を支えてきた多くの労働者が一斉に定年退職を迎える昨今、生産現場に身を置く我々は、脈々と続いてきた「ものづくりの心と技」を着実に後進に引き継がなくてはなりません。

 そしてこれこそが、今直面しているかつてない経済危機を乗り切る最大の武器になると確信する次第です。

(*)大径溶接鋼管とは、厚板(主に厚さ約6ミリメートル以上)を母材として鋼管状に成形してから継目を溶接し製造する鋼管と、薄板(主に厚さ約9ミリメートル〜12ミリメートル以下)を母材としてスパイラル状に成形しながら継目を溶接し製造する鋼管の2種類に大別できますが、福川さんが携わったものは主に前者です。

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