麻生内閣メールマガジン(第13号 2009/01/08)
私の住むまち
[流氷の恩恵とともに](オホーツク圏観光連盟会長 桑島繁行)
 北海道の北東部に位置する世界自然遺産「知床」の玄関口、知床ウトロ温泉の2009年元旦の天候は雨。過去に記憶が無いほど暖かい正月を迎えた。

 過去に知床の空にも輝いたというオーロラを再現した「オーロラファンタジー」をメインイベントとする「知床ファンタジア」が2月5日から開催され、今年で23年目を迎える。今では知床を代表する流氷観光イベントに成熟したが、当初は流氷観光という概念自体一般的ではなかった。地域の「冬祭り」はオホーツク海沿岸各地でも行われていたが、本格的に「流氷を見る」ことを目的とした誘客イベントは決して多くはなく、冬期の集客に苦慮する面も多々あった。知床ファンタジアも、スノーモービル、熱気球、さらには本物のペンギンの展示など、試行錯誤を重ね現在の形態へと変化を遂げ、期間中約20万人が訪れる冬期の目玉イベントとなった。

 オホーツク圏を見ても、網走の砕氷船おーろらや紋別の砕氷船ガリンコ号・氷海展望塔「オホーツクタワー」など、冬の観光資源として「流氷」は魅力的であり、冬期観光客来訪の一翼を担っている。

 しかし、世界的な温暖化は当然、知床・オホーツク海にも影響を及ぼしている。冬期に隣人と挨拶を交わす際も、暖かい冬、雪の減少、流氷の減少について話が続くこともしばしばである。気象庁などの海氷・流氷情報のデータを見ても流氷の接岸日数、海氷面積が減少していることがうかがえる。古くからオホーツク地域の文化や暮らしに多大な影響を与えてきたが、今となっては貴重な冬期の観光資源であり、指折りの漁場でもあるオホーツク海や、知床の生態系を育む流氷の保全が急務となった。

 2007年度から本格的に始まった、オホーツク圏観光連盟と北海道網走支庁が共同提唱する「オホーツク流氷トラスト運動」は「Save the ice, Save the earth(流氷を守ることは地球を守ること) 」を合言葉に、まさに流氷の到来に恩恵を受けるオホーツクに生きる私たちの使命とも言える運動である。

 この運動は、豊かな自然や歴史的建物を守るため、広く寄付を募り、土地や建物を購入し保存する「ナショナルトラスト」と同様、参加型の取組であるが、流氷を環境保全の象徴として位置づけ、植樹や宿泊施設の室温の見直し、使用済みの天ぷら油から製造したバイオディーゼル燃料の利用など、住民、企業、観光客などそれぞれが何らかの負担や行動をすることで、地球温暖化を防止し、豊かな自然を守っていこうという取組である。

 2007−2008年冬の運動で排出を抑えられたCO2の総量を熱量に換算すると、保全できた海氷面積はテニスコート21面分。地球規模の現象に対し小さな働きかけではあるが、漠然ととらえがちな地球温暖化を「目に見える流氷」を通じて、当地に住む者と観光客に考えるきっかけを与えてくれるのではないだろうか。

 観光資源としてはもちろん、地域として環境への意識までも高める「北極域で漂着する最南限の流氷の恩恵」をこれからも活かしてゆきたいと思う。

※ オホーツク流氷トラスト運動(北海道網走支庁ホームページ)

※ オホーツク・冬の魅力(オホーツク圏観光連盟ホームページ)

※ 写真を見る

※ 執筆者の紹介