麻生内閣メールマガジン(第15号 2009/01/22)
この人に聞きたい
[ノーベル賞を受賞して思う]
(2008年ノーベル物理学賞受賞者、京都産業大学教授 益川敏英)
 今回の出来事以後機会あるごとに発言してきたが、近年受賞者が多数出ているからといって、現在の日本の科学の現状が万万歳ということにはならない。受賞理由が同じである私と小林誠先生の場合で言えば、1972年の仕事であるが、最終的に実験で検証されたのが、2002−2003年である。昨年我々と同時にノーベル物理学賞を受賞された南部陽一郎先生の場合はもう少し早くても、と思うが、現在評価されているのは、30年程前の仕事である。決して選考する側の対応が遅いのではない。現在の学術状況の結果の評価は、30年程先に現れるのである。これが言いたいことの一つである。

 今一つは、現在は基礎科学への関心も表面的にはあるが、底の浅さを感じる。基礎科学と言った時何を指すのかは使う人により違うが、あえて、まだ何の役に立つか分からないが、研究者が夢中になって取り組んでいるもの、という極端な言いかたをした場合、現在日本において系統的に基礎科学を支えている組織は大学にしかない。

 その大学の基礎科学が危ないのである。近年研究にはお金がいる。また科学は力をつけ、生活に密着した分野でも発言できる様になりつつある。これはこれで結構なことであるが、限られた資源のなかで、役に立つ科学・分かりやすい科学・大学の外で市場原理のもとで成り立つ科学などが研究費の餌場として雪崩れ込んでいる。これはこれでしっかりした支援体制が必要であるが、広い意味の科学に栄養を供給する基礎科学を維持し発展させるしっかりした体制を作り上げるのも急務である。

 総合大学は役に立つ科学への栄養源と広い分野への人材の供給に特化すべきであろう。

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