麻生内閣メールマガジン(第32号 2009/05/28)
この人に聞きたい
編集部注)5月22日は国連で「国際生物多様性の日」と定められています。これは、生物多様性条約の本文が、生物多様性条約交渉会議において採択されたことに由来しています。
今週は、長年植物分類学を研究され、「生物多様性」に関する取組を進めている兵庫県立「人と自然の博物館」の岩槻邦男館長からメッセージをいただきました。

※ 「生物多様性」についてはこちらをご覧ください。



[生物多様性とわたしたち]
(兵庫県立人と自然の博物館館長、東京大学名誉教授 岩槻邦男)

 わたしたちはさまざまな生き物に取り囲まれて日々の暮らしを営みます。食べるもの、着るもの、住むところで、いろんな生き物の恵みを受けています。人間関係からくるストレスを癒すのは、植物のみどりやかわいい動物たちです。さらに、絶え間なく呼吸を続けられるのも、植物が分子状酸素を放出してくれるおかげです。万物の霊長といいながら、ヒトは自分だけでは生きることのできない存在です。

 わたしたちは個体として完結した生を生きていると思っていますが、からだを構成する60兆の細胞のすべてが、個々にわたしとしての個性を確保していることはあまり考えません。一方、個体として生きていると漠然と思っていますが、実際は、地球上に生きている生き物たちが全体としてまとまった生命系として生きているその生の1要素として生きているに過ぎない、という面があります。わたしのからだを構成する細胞のひとつひとつがわたしを構成する要素であるように。

 気づかぬ間に恩恵を受けながら、使い捨てにしているさまざまな生き物たちとの関係を、地球規模で見直そうと、生物多様性条約がつくられ、この問題を考えるために5月22日は国際生物多様性の日と定められています。今年のこの日はわたしも国連大学で開かれた「外来種のきた道、行く道」と題されるシンポジウムに参加しました。

 来年10月には、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が、日本ではじめて名古屋で開催されます。来年は国際生物多様性年にも当たっています。

 日本列島は温暖多雨の気候に恵まれ、複雑な地形を刻まれて、多様な植物の生育に適し、濃いみどりに覆われ、そこに棲む動物も多様です。この列島に生きる日本人は、恵まれた生物多様性と共生する歴史を維持してきました。日本人の自然との共生のすがたは、里山のような理想的な開発に実を結んでいました。

 最近になって、日本の生物多様性に、絶滅危惧種の頻発に象徴されるような、大きなほころびが生じています。先祖から受け継いだこの貴重な遺産を、孫子の世代にも引き継げるように持続的に利用することが期待されます。豊かな生物多様性を、今日の自分のためだけに濫費(らんぴ)するのではなくて、生物多様性を構成する1要素としてのヒトの生を、生命系の生として安全に生き続けたいものです。

※ 地球のいのち つないでいこう〜生物多様性〜Just Japan プラス(政府インターネットテレビ)

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