麻生内閣メールマガジン(第37号 2009/07/02)
この人に聞きたい
[感謝の気持ちを込めて、歩み続ける女優の道]
(女優 森光子)
 風薫る五月に、連日大入りのお客様にご覧いただくことができました「放浪記」帝劇公演の幕がおりまして、早や一月、すっかり夏空となりました。

 振り返ってみますと、昨年暮れの名古屋・中日劇場での公演以来、四月一日の稽古開始までは、“風邪をひかないこと、転ばないこと”を守りつつ、またお客様にお目にかかれる喜びと、また一方では、理想とする「放浪記」へ向けて一抹の不安の入り交じった日々でございました。

 けれども、雀百までと申しますか、ひとたび稽古に入りますと、私も不思議に思えるほどに、身も心もおどり、林芙美子役を生きている自分自身を感じておりました。そして、初日から五日目の五月九日には、通算二〇〇〇回目の公演を迎えることができました。

 初演の頃を振り返りますと、遠い夢の彼方のことのようでありながら、ついこの間のことのようにも感じられます。その長い歳月、共に芝居をつくって下さった共演者の皆さんやスタッフの方々のチームワークとアンサンブルがあったればこその二〇〇〇回でございます。心より感謝いたしております。

 さらに、千穐楽(せんしゅうらく)の日には、国民栄誉賞決定のお知らせをいただきました。思いがけないことでもあり、身に余る光栄に言葉もございませんでした。

 私は、昭和十年に女優となりました。映画、歌、ラジオにテレビ、数多くの経験をいたしまして、初めて主演を演じましたのが「放浪記」の初演です。昭和三十六年、四十一歳のことでした。以来半世紀近く、「放浪記」は、全国各地のお客様にご覧いただきまして、心あたたまるご声援や拍手を頂戴しました。

 「お客様が第一、自分は一生懸命」をモットーにしております私にとりまして、今回の受賞への感謝の気持ちは、この後も、ひたすら、ひたむきに芸の道を進み続けることでしか、あらわすことができないと確信いたしております。

 若い方々に申し上げたいのは、今、日本に戦争のないことの有難さです。

 世の中は不況のただ中で、お考え通りにならないことも多いかと思いますが、どうか夢中になれることを見つけて、前へ前へと向かって進んでいって下さい。心からそう願っております。

 この度は本当に有難う存じました。
 皆様のご健康とお幸せを心よりお祈り申し上げます。

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