麻生内閣メールマガジン(第41号 2009/07/30)
この人に聞きたい
[巨大魚飼育への挑戦]
(海洋博公園・沖縄美ら海水族館館長 内田詮三)
 計らずも「海洋立国推進功労者」として表彰して頂くと伺い驚いている。水族館は現場の飼育担当者が中心となって成り立っており、それを支える多くの部門の人々の一致協力によって良き成績が得られる。従って今度の受賞は私個人というよりはこれらの多数の担当者の代表として頂いたものと受け止め、感謝している。

 海のことについては解らないことだらけである。ともすれば、なんでも科学的に解明され得るとの風潮が見られるが、これは間違い。

 とりわけ海の動物については未調査、未解明な事柄に満ちている。1975年に開催された沖縄海洋博の時、政府出展「海洋生物園」用に奄美大島で捕獲したイルカは日本新記録種のミナミバンドウイルカ、その後存続した水族館の最初の目玉魚となった全長3mのオオメジロザメも日本新記録種であった。当時、沖縄近海の鯨類リスト、サメ・エイ類のリストも存在しなかった。つまり、沖縄の海の動物について全く調査が行き届いていなかった。水族館の30年にわたる調査によってこのリストも出来上がり、来館者への環境教育、外部へ打って出る種々の講演会や移動水族館で活用されている。

 当館の展示のコンセプトは沖縄近海の海の動物の収集展示である。当初より世界最大の巨魚ジンベエザメの飼育に挑戦することは考えていた。チャンス到来、初めて飼育を開始したのは1980年、失敗を重ね、初めて長期飼育に成功したのは3匹目、1982年のことで、全長4.4mのメスの個体であった。

 捕獲、輸送、飼育、何もかも初めてのことで試行錯誤の連続であったがなんとか成功、現在飼育中のオスのジンタは全長8m、飼育期間は14年となり、日々世界記録を更新している。オニイトマキエイ(マンタ)は世界最大のエイ、これも世界最初の飼育成功であり、(1988)、昨年は繁殖にも成功、この父エイは飼育記録17年、世界最長である。

 このように未解明のことが多いこの世界では、目の色を変えて頑張れば、世界一の記録を達成し、生物学的に貴重な知見を得ることも出来る。例えば放流したアカウミガメの世界初の太平洋横断確認、オオメジロザメの繁殖様式の世界初の解明、造礁サンゴ類の大規模長期飼育展示等である。

 造礁サンゴは水族館前面に拡がる自然海では高水温による白化現象で壊滅的な被害を受けたが、水深20mの冷海水を使用している飼育群体は全く影響を受けず生存している。

 毎年、6月頃には槽内で放卵放精をしている。飼育下で得られた知見を、荒廃したサンゴ礁の再生に何とか生かすべく、日夜努力している所である。サンゴ水槽や自然海のイノー(礁池)での児童生徒を対象とした教育普及にも力を入れている。

 世界最大の巨魚を中心とする、世界トップの海の動物展示をご覧いただいて、海の世界に思いを致し、同時に九州以北とは非常に異なる素晴らしい自然と文化を形成している沖縄世界を御家族で楽しんで頂くことをお勧め致したい。

※ 第2回海洋立国推進功労者表彰の受賞者決定について(首相官邸ホームページ)
※ 沖縄美ら海水族館ホームページ
※ 写真を見る
※ 執筆者の紹介